私が育った打穴里地区は急斜面の谷を耕し、石を積んで棚田を作り、斜面は桑畑だった。
桑の木は根を広く深く伸ばすので災害予防にもなったのだろう。

山道を進むと思いがけない脇道に又、棚田があった。
我家の田も隠し田のような人目につかない所だったが、田んぼのそばは牛の為の草刈場。
父は勤め人だったので農家の人が草を刈っていた。農家では牛が一番。
刈ったばかりの草と雑穀、水を与えてから家族の朝食、体調がわかるよう玄関の続きに牛の間屋が有ったので農家には独特の臭いがした。

我家の田のそばには笹百合が群生していた。

田植えの手伝いの後、いっぱいの百合を抱えて帰り、母の和裁教室の娘さん達にも差し上げた。
便利なところを求めて転居したが、やはり山里、狸や猪が夜の散歩でやって来る。五匹の子狸と母狸を見るとほほえましくはあるが農作物を荒らすので困る。

作業場の裏の斜面に笹百合が根付いた。20年前、3本だったのが、今年は20本
花が散り実が育っている。これがはじけて又少しづつ増えると思うと来年が楽しみだ。