草木染を試していると迷路に迷い込む。
先輩の諸先生の残された本が指針であるが、その範中にとどまらない現実に出会う機会がある。

染材である植物が育った土質、日照による発色のちがいもあれば、染める布によっても発色が異る。
反応させて発色と色の定着を促す触媒も同様。
古書にある色は現在の科学工場で作られた鉄、銅、アルミ等で反応させた色とは全く異なる。

鉄分を多く含んだ田んぼの水で反応させたもの。
植物を燃やした灰の灰汁を用いたもの。同じ工程を何度も日、月を重ねて繰り返して染めた糸を暗い部屋につるし、上下、内外を考えて安定させ数年、その後に織り上げた布は特権階級の装束として格が定められていた。

染の家は世襲で知識と技が門外不出で伝えられた。
今も伝わる染の家が宮本武蔵と戦い、吉岡剣法の吉岡家である。

石油からの科学染料出現の後に草木染を始めた人々の著作の中には“あれ!?”と違和感を覚える記述がある。
万葉の染は自然からの水や灰で発色を促したが、現代の都市部での生活の中では不可能なことが多い。

椿の葉を軽トラの荷台にいっぱい集め、それを燃やした灰汁二斗で一枚の着物染の触媒にする。等の作業は無理でしかない。
地方都市でも庭でのごみ焼は禁止の現代である。

他の人が発表されている染についておかしいと思うことはあるが関与しない。

山里に住む特権を生かし自然流を貫く。
先月沢山の五倍子で絞りのスカーフを染めた。
期待の色とはならないので蘇枋で重ね染、紫味が加わるかと思っていたが大間違い赤味がかった金茶になった黄櫨染だ!
思いがけず出現した高貴な色に驚驚